「このまま今の会社で働き続けて、本当にいいのだろうか」
30代になると、薬剤師としてのキャリアや将来の働き方について、考える機会が増えてくるのではないでしょうか。
仕事にも慣れ、責任ある立場を任されるようになる。一方で、昇進すれば責任や業務量が増え、家族との時間を確保することが難しくなる場合もあります。
私自身、これまでに2回の転職を経験してきました。
- 初就職:大手ドラッグストアに就職し、出世を目指してマネジメントの道を選ぶ
- 1回目の転職:80店舗規模の中小調剤薬局へ。ノルマはあるものの、収入は高い環境
- 2回目の転職:60店舗規模の中小調剤薬局へ。ノルマはなく、収入は約200万円ダウン(現在も薬局長として勤務)
かつての私は、出世することに強い意欲を持っていました。しかし、仕事で経験を積み、さまざまな立場の人と関わる中で、少しずつ考えが変わっていきました。
会社で出世することと、自分が望む人生を実現することは、必ずしも同じではない。
そう感じるようになったのです。実際、2回目の転職では、前職の年収ピーク時と比較して約200万円の年収ダウンを受け入れました。それでも、働き方を変えるという選択をしました。
この記事では、私自身の転職経験を交えながら、30代の薬剤師が転職を考える理由と、これからのキャリアを考えるうえで大切にしたいことを紹介します。
今の働き方に疑問を感じている方や、将来のキャリアに迷っている方の参考になれば幸いです。
30代薬剤師が転職を考える7つの理由
薬剤師が転職を考える理由は、人によって異なります。代表的なものとして、次の7つが挙げられます。
- 給与が思うように上がらない
- 職場の人間関係に悩んでいる
- 残業が多く、自分の時間を確保できない
- 昇進後の働き方に疑問を感じる
- 今の職場では成長できないと感じる
- 結婚や子育てなど、ライフステージが変化した
- 薬剤師としての将来に不安を感じる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 給与が思うように上がらない
仕事の経験を積み、できることが増えても、給与が期待どおりに上がるとは限りません。特に、生活費や子どもの教育費などを考え始める30代にとって、収入は重要な問題です。
昇給額が少ない、昇進しても責任に見合う収入が得られないといった状況が続けば、転職を考えるのも自然なことです。
ただし、給与だけで転職先を決めるのはおすすめしません。
年収が上がっても、残業が増えたり、休日が減ったりすれば、生活全体の満足度が下がる可能性もあります。給与だけでなく、労働時間や福利厚生、勤務地なども含めて比較することが大切です。
2. 職場の人間関係に悩んでいる
薬剤師の仕事は、患者さんへの対応だけでなく、医師や看護師、同僚、上司など、多くの人との関わりによって成り立っています。そのため、職場の人間関係が悪化すると、仕事そのものがつらくなることもあります。
人員不足や業務負担の偏り、上司との考え方の違いなど、原因はさまざまです。まずは、職場で改善できる問題なのかを考えてみましょう。
それでも状況が変わらず、心身への負担が大きい場合は、職場を変えることも選択肢の一つです。無理に我慢し続ける必要はありません。
3. 残業が多く、自分の時間を確保できない
薬局では、患者さんへの対応が長引いたり、薬歴の記載が終業後まで残ったりすることがあります。残業が常態化すると、休息や自己研鑽に充てる時間が少なくなってしまいます。特に子育て中の方にとっては、仕事が終わってからの時間も貴重です。
私自身も、仕事と家庭の両立について考える中で、時間の使い方を見直す必要性を感じてきました。
- 業務の進め方に原因がある場合:職場の中で改善できる可能性があります
- 人員配置や職場の体制に原因がある場合:自分の努力だけでは改善が難しく、働く環境そのものを見直してもよいでしょう
4. 昇進後の働き方に疑問を感じる
昇進は、キャリアアップの一つです。役職が上がることで、収入が増えたり、仕事の裁量が広がったりすることもあります。一方で、責任や業務量が増え、自由に使える時間が減る場合もあります。
私が最初に就職した大手ドラッグストアでは、マネジメントの道を選び、店長を目指して働いていました。当時は出世意欲が強く、残業も苦ではありませんでした。先輩たちと店舗に泊まり込んで仕事をしたこともあります。銀座でのプロジェクトでは副長を任され、その後、店長試験の話をいただくところまで進みました。
しかし、その頃から少しずつ考えが変わっていきました。
仲良くしていただいたスーパーバイザーや店長の方々の働き方を見ていると、仕事が生活の中心になっているように感じることがあったからです。もちろん、仕事を楽しみ、望んでその働き方を選んでいる方もいました。そうした方々だからこそ、出世を実現できたのだとも思います。
ただ、結婚などのライフイベントを意識し始めた自分にとって、その働き方が本当に望んでいるものなのか、疑問を感じるようになりました。そして、店長試験を辞退し、転職を決意しました。
この経験から学んだのは、昇進できるかどうかと、昇進したいかどうかは別の問題だということです。周囲から評価されることと、自分が望む生活を実現すること。その両方を考えながら、キャリアを選ぶことが大切だと感じています。
5. 今の職場では成長できないと感じる
30代になると、これまで身につけてきた知識や経験を振り返り、今後どのようなスキルを身につけたいのかを考える機会も増えてきます。調剤スキルを高めたい、専門性を磨きたい、マネジメントを学びたいなど、目指す方向は人それぞれです。
しかし、職場の業務内容や教育体制によっては、希望する経験を積むことが難しい場合もあります。
私自身、最初に就職したドラッグストアではOTC販売を中心に経験を積み、マネジメントを志していました。その後、調剤薬局へ転職したことで、調剤スキルと薬局長としてのマネジメント経験を得ることができました。
当時は、調剤薬局ではマネジメントや店舗経営の数字を、ドラッグストアほどしっかり学べないと思い込んでいました。処方箋をさばくだけの業務に見えていたのです。
しかし、実際に調剤薬局へ転職してみると、調剤業務を行いながらでもマネジメントを学べることが分かりました。今振り返ると、最初から調剤とマネジメントの両方を学ぶ選択肢もあったのです。
当時の自分は、自分が見えている範囲でキャリアを考えていました。環境を変えたことで、キャリアの選択肢が広がりました。
今の職場で成長できないと感じたときは、転職を決める前に、自分が今後どのような経験を積みたいのかを整理してみることをおすすめします。
6. 結婚や子育てなど、ライフステージが変化した
独身の頃は、仕事に多くの時間を使うことができても、結婚や子育てによって生活の優先順位が変わることがあります。
- 収入を増やしたい一方で、家族と過ごす時間も確保したい
- 責任ある仕事を任されるのはうれしいけれど、仕事ばかりの生活にはしたくない
こうした気持ちの変化は、決して特別なことではありません。
私自身、結婚を目前に控え、将来の生活について考える中で、働き方を見直す必要性を感じました。当時は、仕事で経験を積むことにやりがいを感じていましたが、今後の家庭生活を考えると、仕事に費やす時間と、家族のために使いたい時間のバランスを変える必要があると考えたのです。
そこで、パートナーと相談し、2回目の転職を決めました。転職先では年収が下がりましたが、転勤がなく、以前よりも働き方に余裕を持てる環境を選びました。
この経験から感じたのは、キャリアの正解は、人生の状況によって変わるということです。以前は魅力的だった働き方が、今の自分にとっても最適とは限りません。今の自分が何を大切にしたいのかを考えることも、キャリア選択の重要な要素です。
7. 薬剤師としての将来に不安を感じる
医療制度の変化や薬局を取り巻く環境の変化などによって、今後の働き方に不安を感じる方もいるでしょう。薬剤師免許があるからといって、将来にわたって現在と同じ働き方や収入が保証されるわけではありません。
だからこそ、日々の業務をこなすだけでなく、今後どのような能力を身につけたいのかを考えることも大切です。
私自身、薬剤師として働きながら、会社での評価や昇進だけに将来を委ねることには限界があると感じるようになりました。そこで、仕事以外にも目を向け、簿記の勉強や副業など、新しい選択肢を模索しています。
もちろん、副業を始めればすぐに収入が増えるわけではありません。時間も必要ですし、成果が出る保証もありません。それでも、会社で働くこと以外にも、自分で収入を生み出す可能性を育てておくことには意味があると考えています。
2回の転職で気づいた、会社での出世だけがキャリアではないということ
ここまで、薬剤師が転職を考える代表的な理由を紹介してきました。ただ、私が2回の転職を通じて最も考えさせられたのは、転職するかどうかだけではありません。
自分の人生を、どのような働き方で支えていくのか。
この問いでした。
出世のために費やす時間と、得られるものは見合っているか
私は、出世を目指すこと自体を否定するつもりはありません。以前の私も出世意欲が強く、仕事に多くの時間を使っていました。
しかし、さまざまな立場の人と関わる中で、昇進に必要な努力と、昇進後に得られるものについて考えるようになりました。
- 役職が上がれば、責任も増える
- 納得できない業務を引き受けなければならないこともある(サービス残業など、働き方に疑問を感じる場面もありました)
- 役職が上がっても、自由な時間や収入が期待どおりに増えるとは限らない
私自身、1回目の転職先で薬局長になった際には見込み残業制となり、就任前より収入が減りました。
もちろん、役職や職場によって状況は異なります。だからこそ、昇進を目指すのであれば、役職名や年収だけでなく、その先にある働き方まで考える必要があると思います。
年収約200万円のダウンを受け入れてでも、働き方を変えたかった
2回目の転職先として選んだのは、60店舗規模の中小調剤薬局です。1回目の転職先は80店舗規模でノルマがあり、収入は高い環境でしたが、2回目の転職先は転勤がなく、以前よりも人員配置に余裕があり、ノルマもありませんでした。
前職の年収ピーク時と比較すると、その差は約200万円です。決して簡単に受け入れられる金額ではありませんでした。家族がいる以上、収入を軽視することはできませんし、年収が下がれば家計への影響もあります。
それでも、私は年収を最大化することだけを優先するのではなく、家族との生活や、自分が望む働き方を重視することにしました。
転職先では、役職に就いて実績を積めば、将来的に収入を上げられる仕組みもありました。また、仕事に費やせる時間が増えたときには、上級職を目指す選択肢も残されていました。つまり、出世を完全に諦めたわけではありません。
今の生活を大切にしながら、将来の選択肢も残す。
それが、当時の私にとって納得できる選択でした。
この経験から、年収や役職だけでキャリアの良し悪しを判断することはできないと実感しました。収入を優先したい人もいれば、仕事で大きな成果を出すことに喜びを感じる人もいます。大切なのは、他人の価値観ではなく、自分が何を優先したいのかを明確にすることです。
会社の中だけで、自分の可能性を決めない
会社で働くことには、安定した収入を得られる、仕事を通じて経験を積めるといった多くのメリットがあります。私自身も、会社で働く中で多くのことを学び、成長することができました。
ただ、会社の中で評価されることだけを目標にしてしまうと、自分の可能性を会社の制度や評価基準に委ねることにもなります。
そこで、私は仕事以外の可能性にも目を向けるようになりました。簿記の勉強を始め、副業にも取り組む。すぐに結果が出るわけではありませんが、自分の知識や経験を活かして収入を得る方法を少しずつ増やしていきたいと考えています。
目指しているのは、単に会社を辞めることではありません。会社で働くことを一つの選択肢としながら、自分の意思で働き方を選べる状態に近づくことです。
会社に残ることも、転職することも、副業に挑戦することも、自分で選べる。そんな状態を目指しています。
転職を決める前に、まず整理しておきたい3つのこと
ここまで読んで、転職を考え始めた方もいるかもしれません。ただし、不満があるからといって、すぐに転職する必要はありません。まずは、次の3つを整理してみましょう。
1. 今の職場で何を変えたいのか
給与なのか、労働時間なのか、人間関係なのか。不満を具体的にすることで、今の職場で改善できる問題なのか、環境を変えなければ難しい問題なのかが見えやすくなります。
例えば、残業が多いことに悩んでいるなら、業務の進め方や人員配置に改善の余地があるかもしれません。一方、会社全体の制度や方針に原因がある場合は、個人の努力だけで解決するのが難しいこともあります。まずは、不満の原因を整理することから始めてみましょう。
2. これからの人生で何を優先したいのか
収入を増やしたいのか、家族との時間を確保したいのか、専門性を高めたいのか。すべてを同時に満たすことが難しい場合もあります。だからこそ、自分が何を大切にしたいのかを明確にしておくことが重要です。
私自身、2回目の転職では、家族との生活や働き方を優先した結果、年収約200万円のダウンを受け入れました。
ただし、収入が下がることで生活が苦しくなってしまっては、本末転倒です。家計への影響も考慮しながら、自分にとって納得できるバランスを探すことが大切だと思います。
3. 会社以外の選択肢も考えてみる
転職は、働き方を変えるための一つの方法です。しかし、それだけが唯一の方法ではありません。
- 現在の職場で働き続けながら資格を取得する
- 副業に挑戦する
- 自分の専門性を活かせる活動を始める
このように、少しずつ選択肢を増やす方法もあります。もちろん、副業には時間も労力も必要です。収入が増える保証もありません。私自身も、仕事と子育てを両立しながら、少しずつ副業に取り組んでいます。
すぐに大きな成果が出るとは限りませんが、会社からの給与以外にも収入を得る手段を育てることは、将来の選択肢を増やすことにつながると考えています。
大切なのは、今すぐ会社を辞めることではありません。会社に依存しすぎず、自分で働き方を選べる可能性を少しずつ広げていくことです。転職をするにしても、今の会社に残るにしても、選択肢を知っておくことに損はありません。
まとめ|周囲の評価ではなく、自分が望む人生からキャリアを考えよう
私は、これまでに2回の転職を経験してきました。
- 最初は出世を目指してドラッグストアで働く
- 1回目の転職で、80店舗規模の中小調剤薬局へ移り、調剤スキルとマネジメントを学ぶ
- 結婚を機に働き方を見直し、2回目の転職で、年収だけでなく、家族との時間や生活とのバランスも考えて60店舗規模の中小調剤薬局を選ぶ
2回目の転職では、前職の年収ピーク時から約200万円の年収ダウンを受け入れました。収入だけを考えれば、大きな決断だったと思います。それでも、自分が望む働き方を考えたうえで選んだ道だったからこそ、年収や役職だけでは測れない大切なものがあると実感しました。
出世を目指すことも、転職することも、今の会社で働き続けることも、間違いではありません。
大切なのは、周囲から評価されるキャリアを追いかけるだけでなく、自分がどのような人生を送りたいのかを基準に、働き方を選ぶことです。そして、できることなら、会社での働き方だけに将来を委ねないこと。本業で経験を積むことに加え、資格の勉強や副業などを通じて、自分の可能性を広げておくことも一つの方法です。
私はこれからも、薬剤師として働きながら、家族との時間を大切にし、簿記の勉強や副業を通じて、会社だけに依存しない働き方を模索していきます。すぐに大きな成果が出るとは限りません。それでも、自分で選べる未来を少しずつ増やしていきたいと思っています。
今の働き方に疑問を感じているなら、まずは自分が何を大切にしたいのかを考えてみてください。
その答えが、これからのキャリアを考える第一歩になるはずです。





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